GoShuさんから頂いた 短編十二ヶ月 十月期作品群の ご感想のご紹介
かなり遅くなって周回遅れの感がありますが、
例にならって11月期の感想をお送りします。
例にならって、リライト稿・リライト趣旨は読んでいません。

>進行豹さん
このところ、読み返さないと意図が汲めない作品が続いています。
ヒロインは変は変ですが、変態扱いされるような人でもない気がします。
なのでラストも「アレ?」を越えて、意味がわかりませんでした。
そしてそれより何より全体の描写がまずく、登場人物たちが
現在どういう状態なのかわかりませんでした。
たとえば冒頭、ヒロインが高瀬を尾けているわけですが、
それが「一人っきりで、たった一度も振り返らずに歩いてる。」
まで行かないとわかりません。
上記の記述でアレっと思い、もう少し進んでやっと「ああ、最初からもう
尾けてんのか!」ということがわかります。
「ひらめいて、高瀬の背後、橋の向こうを確かめてみる。」の
「橋の向こう」というのも、「(双方、橋の中央付近にいての)川上側と川下側」
という意味でしょうが、普通の用途ではないと思います。
私は、女装男が今まさに現れて、橋を渡りはじめようとしているのかと思いました。
靴紐を結び直すくだりも、「言い出しかねて自分に言い訳しながら他のことをする」
ということなんでしょうが、すっきりそう通ってくる記述でもないですし。
他愛のない話であるのはいいのですが、それであれば記述の明快さ、
テンポというものが重要さを増すと思います。
しかし「読んでわかる」ではなく、「よく読んでみると、おそらく作者は
こういうことが描写したいんだろうと推測できる」という記述の連続でした。
今回は読むのが苦痛でした。企画終盤になって、今までの中で一番悪いです。
 
>yositaさん
話としては面白いですが、これはまだ叩き台段階の作品だと思います。
橋という固定視点から、設計士の男とその娘の話が綴られるわけですが、
この描写のやり方が最善とは思えません。
その最大の理由は、「橋」のあり方、あるいはキャラクター性が定まって
いないからと思います。
1.完全に傍観者、あるいは人間とは次元の違うことを思索する者とする
2.人間と似たキャラクター性を持たせる
のいずれとするか。
それがあっちに行ったりこっちに行ったりしています。
ラストシーンも1と2のどちらを取るかで、大きく描写が
変ってくるはずです。
そこの掘り下げが足りないために、ラストシーンの印象も
どっちつかずになっています。
橋を視点にするからには、たとえば駅前に店を出している易者を
視点にするのとは違った描写が求められる、といえばわかりやすいでしょうか。
今のままでは、「たまたま視点が橋だった」以上のものにはなっていません。
 
>KAICHOさん
第一行に「鼻膣」の誤字があるのは誤字の中でも罪が重いほうでしょうか。
それはそれとして。
10年前、妻は取り乱して橋から落ちたのでしょうか。
それとも単なる不幸な事故だったのでしょうか。
作品全体の構成からは、前者であるほうがいいと思います。
(後者だと、現在の妻がなぜこういう状態なのか、という点に
説得力が減って、作り物感が強すぎてしまいますので)
しかし、それであれば、なぜ落ちるほど取り乱したのか。
その夫婦の背景について何か書き加えるべきだったと思います。
というかそれは必須だったでしょう。
それがあるかないかで、現在の二人の状況への読者の感情は
まったく違ってくると思いますので。
それ以外はすべてOK。
情景も見えてくる、いい文章でした。
 
>糸染さん
「気持ちがよくわかる」作品というのが感想です。
その読後感が大きいので、それだけで終わってもいいのですが、
いくつか補足。
1.主人公の気持ちと読者の気持ちをシンクロさせる、
  うまい描写になっています。特に前半部分。
2.「橋」というのが、舞台として非常に適切だと思います。
  これは非常に良い点です。
3.ただ、これだけで完結している話とは思えません。
  長編の導入部のようです。
4.短編にせよ、長編の導入部にせよ、ラストはこれで
  いいでしょうか?
  主人公に対する嘘の救いは必要ありませんので、
  なにかイベントを起こせというわけではありません。
  最後、橋の途中で「進む」か「戻る」か「立ち止まったまま」か。
  どれにもそれぞれの意味合いがありますが、
  そこの掘り下げをなさったほうがいいかと思います。
  進むは進歩を意味しませんし、戻るは退歩を意味しません。
  「私だったらこうする」というのもありますが、
  蛇足のようにも思えますので、割愛します。
 
>山田さん
かなり執筆に苦労したんじゃないか?という印象を受けたのですが、
違いますかね?
読んでいて退屈はしませんが、話としては平凡でした。
それ以上は特に言うことがありません。
もうちょっと主人公はエキセントリックな感じにしたほうが
よかったかもしれません。
そうすれば、喜劇感がもう少し出るでしょうし、作品の
面白みが増したのでは。
イメージとしては、喜劇版「ロミオとジュリエット」みたいに
なったでしょう。
ラスト段落の記述の一部は蛇足でした。
この経緯だと二人は讃えられないでしょうし、町と村の仲は
悪くなるだけと思います。
 
ラスト2回!年末で皆さんお忙しいでしょうが、
がんばってください!


<いただいたご感想は以上です。ご感想、ありがとうございました!>