「Without Word」リライト意図 最初に本作品を読んだ時、これはもうリライトしないほうがいい、と思いました。 伝わらない言葉と、それぞれ微妙な勘違いが上手に噛み合って、一つの世界に なっている、と感じたためです。 あえてリライトするなら、という前提で暫く悩んで、以下を抽出しました。  A.物語にあまり起伏がない。事実を淡々と述べているだけなので、見方によっては   退屈かもしれない  B.作品中で、登場人物に何か心情の変化があってお話が進むわけではない。   これもちょっとした「変化」があったほうがいいかもしれない。  C.少年の、「閉じた空間から逃げ出したい」「動物と会話したい」の話は、主題から   遠いわりに行数が多いので、蛇足感がないでもない A.とB.のために、ちょっとした事件を起こすことにしました。猫と犬は最初仲悪い、 だけど、その「ちょっとした事件」を元に、少しだけ距離が縮まる、という形に したかったからです。それがリライト中の「猫が車に引かれそうになるのを犬が 助ける」です。これに伴い、ラストの「犬が風邪気味なところ、猫が犬小屋に入って 暖める」が、犬への恩返しの形に変化しました。 C. は表現を調整して文章量を減らすことにしました。ここはおそらく、「何も 考えていない犬」と「難しいことを考えている少年」との対比描写だと理解して、 削ってはいません。 これらに伴い、猫の性格がツンデレに変わりました。最初仲悪いわけなので、 言葉は通じなくとも仲悪くさせるためにツン、最後は恩返しをするためにデレ、 ということで。 # 最初は「義理堅さを連想させるから」という理由で江戸っ子にしようと思ったの # ですが、書いてみてすっきりしなかったので諦めました。 書き方として、いくつかの文で、主語がなかったことが引っかかりました。この 文の主語は何か?が、前後からすぐにわかるものとそうでないものがあった ためです。誤解を招く可能性がある文には「犬は」「猫は」「少年は」が、適宜 挿入されているとよいと思いました。 私も散々迷ったのですが、「彼」「彼女」という言葉は今回は使わないことに しました。地の文が三人称で、かつ三人(匹)が登場するので、その表現では 対象が明確にならない可能性があったためです。でも、個人的には、「彼」 「彼女」という呼び方は好きで、こういう文章でも適当に用いることができるように なれば、表現の幅が広がるかなぁ、と思いました。