特徴あるスタイルの文章であって、その変更は原文の魅力を損なってしまうと考えた。

寛太、源治がネコだというのは最後まで気づかなかった。
なんかおかしいなあ、と感じながら読み進め、最後に「ああ」と。
弘美のほか、最初に出てきた戸賀・田中も茜と会話を交わしているキャラクターは全てネコだろうか。

よって以下の4点を修正するほか、表現に若干手を加えることでリライトとした。

1.
冒頭のクラクションの状況が理解できない。
ネコの死体が路上にあって人だかりができているというならともかく、
公園の中心付近に死体があるというのでは人だかりがあっても車の邪魔になるとは考えがたい。
冒頭の導入部において雑然とした印象を与える作用は有効と思い、
死体は公園の入口に捨てられていたものと変更する。

2.
寛太の
「感情に任せて投げつけ(141行目)」
「カタログでも見れば(192行目)」
「車のシートを引きずり下ろす(310行目)」
というのは、ネコには物理的に無理な行動であって、叙述トリックの域を逸脱している。
そのほか「そいつ、手が震えてやがった(198行目)」との証言も
「深夜だったから、はっきりとは見えなかったけど(153行目)」からは違和感がある。
また源治について「ホームレス――宿なしの彼(225行目)」というのも若干不自然。
ネコの世間において宿無しという事実はあえて指摘するほど特殊なものでないと思われる。

3.
犯人の推理において、「公園に捨てた」→「探されると見つかってしまう近所だから」という論理は苦しい気がする。
事故現場が公共に出入り自由の場所であれば探そうが探すまいが自然に痕跡が見つかるだろうし、
私有の敷地内であれば探すために入ってくることができない。
事実その後の話で、痕跡らしきものは車のボンネットの誤魔化せる程度の汚れしかなかったと読み取れる。
推理がどうであろうと、探しに行って見つかったならOKなわけで些末かもしれないが、
「推理」という体裁をとっていると魅力としてマイナスになる。
リライトでは「公園に捨てた」→「親交があって黙り通せなかったから」とした。
なおボンネットだとフロントエンジンの蓋部分であって、
ネコがボンネットの上に落下して死亡したことになってしまい、衝突死という理解に合わせてフロントバンパーとした。
また落下とするとボンネットはむしろアクションもので高いところから無事に着地するための落下場所に選ばれる。

4.
――スイソク――
――ハンニン――
などとある中、
――バツ――
だけ全角カタカナとなっており、単純なミスと判断して半角とした。