『三十年目の再会』リライト意図 (糸染晶色)
[気になった点]
佑介と真理絵が予約席の人物を知っていたという展開は驚いた。ただ、それを前提に前半を読み直すとセリフが不自然。「へぇーロマンチックですね。それやっぱり別れた元恋人とかなんですか?」や「マスター、その二人が来るまで、ここにいさせてくれない?」など。そのように言って知らない振りを通す理由に納得できませんでした。
*二人が三十年前の約束の件に気づいたのが途中からという線も考えたものの、序盤で「……佐藤佑介は、大きな目を見開いてその札をじっと見てから……」との描写があることから、最初から知っていたものと解釈しました。
マスターの「ずっとおかしいと思ってたんだ。君は女性にしか、真理絵くんは男性にしか注目してなかった」というセリフも奇妙。佑介や真理絵が何に注目していたか本人以外が知ることは困難のはずであり、またマスターも仕事があるため二人を観察していることはできないのでは。初読では自然に感じて気づかず、読み直して確かに男性客と女性客とで佑介と真理絵の様子が違っていたと気づかされるが、それを表現するならマスターでなく佑介・真理絵の口から語らせるか、地の文で語るかだと思う。
真理絵の叔母が「あなたたちが座るべき」と言った真意がはっきりわかりませんでした。おそらくはかつての二人がそうであったように『言い争いもしょっちゅうだったが、仲が良い』二人である真理絵と佑介に勧めたものと思うが、その二人がいまは死んでしまってもう約束を果たすことができないという不幸な結果となっていることを考えると解釈が苦しくなってしまう。
[リライト方針]
読んだ印象では話の軸は「三十年前からの予約」「佑介・真理絵の関係」の2つと感じましたので、その繋がりを強化することを目指しました。具体的には約束をなぞって二人の予約の席に佑介・真理絵が座ることの意味を示すことを目標としました。
ここで佑介・真理絵がそれぞれの父・母の経歴をなぞることを暗示すると、それぞれ死んでしまっていることからハッピーエンドにしにくい。それもアリではあるが、ハッピーエンドとするため二人が生きている設定に改変。
知らない振りをしていた点について消化するにあたり2案を考え、
A案)佑介と真理絵が知らない振りをした理由を差し替える
B案)佑介と真理絵は死んだ親の「三十年前の約束」について知らなかったものとする
A案についてアイデアが浮かばないので今回はB案を採用しました。
文体は原文の維持を心がけたがぎこちなくってしまったかもしれません。
また