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「リライティング」 原作:進行豹さん リライト:achroさん
《原作》
タイトルですが、短編12ヶ月初のものとして、進行さんの意気込みが伝わってくるようです。
この作品で良かったと思ったのは、高藤の心情の変化でした。
笹井とのやり取りの中で「交流を持つことのない」「ネームバリューも何もない」
「今をときめいた記憶なぞない」(最後はリライト稿で削除されましたが)と否定的な言葉で、笹井に
対して思っていることなのでしょうが、私には、高藤が無気力に仕事をしているよう受け取れました。
それがラストでは、「紡いでいける」「歩んでいける」「きっと叶える」と人が変わったように
前向きになって、やる気に満ちているように感じました。花歩さんとの一件が意識せずとも、心の
わだかまりになっていたのが解決された、高藤の高揚感が伝わってくるようです。
笹井のキャラも良かったです。仕事の依頼で来たということですが、実際には花歩さんを憐れんで、
何とかしてあげたいというところが、人間味があって良かったです。これで作品もヒットするような
ものになるなら、本当に腕利きの編集長ですね。多分そうなのでしょう。
《リライト》
原作での笹井のセリフで「とても穏やかな方だ。かほさん、ですか?」というのがありますが、
その部分もリライトされていました。よく考えると、笹井には「かほ」という名前を知りえなかった
はずということが分かりました。笹井には姿と願いが分かるだけで、会話はできない設定でした。
リライトにより全体的にすっきりさせて、その分思い出を入れるだけで、最後は原作以上の
盛り上がりを感じました。
一番良かったのは「……ふふ」というセリフでした。普通に考えれば笹井の笑みなのでしょうが、
聞こえるはずがない、話せるはずもない花歩さんが微笑んだように感じられました。
たったの二文字ですが、とても暖かな気持ちになりました。
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「空とピート・オブライエンについての短い挿話」 原作:GoShuさん
「ピート・オブライエンの帰還」リライトタイトル リライト:進行豹さん
《原作》
冒頭で「ある少年の幸せについての〜〜」と書かれている通り、空に憧れたビートの幸せな気持ちや
満足感が良く伝わってきました。一例を挙げると「眠りから覚めて”おはよう”」の部分では、
暖かな日差しの中、草原で昼寝をしているようなイメージを感じました。この幸福感をだすには
ビート本人の一人称か、神視点の三人称でなければ表現が難しかったと思います。
この点は原作の一番良かった点だと思いました。
「妙に黒い雲」の部分では、ビートの生死?を分かつところだけに、雲に対する不吉さなど
もう少し説明や、ビートの気持ちが欲しかった気がします。
ラストでは「青い本」が次の持ち主に渡り(実際は別の本ですが)また空に誘って、これを
繰り返していくような不思議な本をイメージしました。
《リライト》
一人称なので、テンポよく楽しみながら読めました。また、ボブのキャラが錬電ファンなら
誰でも知っているマナカさん風(ほとんど本人!?)で親しみを持てました。
物語も違和感なくラストまで軽快に繋がっていて、練り込まれている感じを受けました。
ただ、ビートの幸福感はボブの一人称であるため、十分に感じられなかったのが残念でした。
ラストでは「青い本」が次の持ち主に渡り繰り返すのではなく、あくまでビートが還ってきた
という物語になっており、ビートの物語の味付けに「青い本」が使われてるんだと思いました。
○こうして読んでみると、原作とリライトは全く違う物語になっており、比較してしまうから、
お互いの長所短所が目立ちますが、片方だけ読んでいればそれぞれ面白い物語だと思いました。
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「イミテーション・ブルー」 原作:achroさん リライト:KAICHOさん
《原作》
この作品を読んで最初に思ったのが、定年で退職した会社の上司達でした。皆さん1、2年後
に再会すると退職後も変わらず元気な方と、とても老け込んでいる方に見事に分かれています。
お話を聞くと、元気な方達は、趣味の写真やゴルフなどに励んでいるそうで、老け込んでいる方達は、
孫の相手や奥さんの買い物に付き合う(運転手)くらいだそうです。そんな様子を見てきましたので、
冒頭の敏夫の姿がリアルに想像でき、黄昏という言葉が思い浮かびました。
そんな夢も趣味もないような敏夫が、「青い本」の力を借り、夢を再び見ることが出来るように
なるのは非常に感慨深いものがありました。
夢の中で海賊から逃げる時の、マルガレーテとのやり取りが、コミカルで面白かったです。
ただ、偽りの空の話が少し唐突に感じました。
ラストでは「新鮮な色合い」「不敵な笑みを浮かべた」などの表現があり、60才過ぎのはずが
とても若々しく、前向きな気持ちが感じられ良かったです。
《リライト》
冒頭での会話で「邪魔だったか」「散歩してくる」など、退職後の自宅での居心地の悪さや、
時間を持て余している様子が感じられて良かったです。
特に「散歩してくる」は、近所の爺さんが散歩してるのを思い出してしまいました。
夢の中でのモノトーンの表現が、敏夫が夢を忘れてしまったことや、現実的なことを表している
ようで印象的でした。できれば、色ずくところを読んでみたかったです。
夢の中での出来事は、姫を海賊から助けなくても説得力のある締め方で、すっきり纏まっていて
良かったと思いました。
ラストでは、妻の視線が「三十年ほど前の視線に、少し似ていた」というのが印象的でした。
色々と想像させられる、良い文章だなと思いました。
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「葵のさがしもの」 原作:yositaさん リライト:GoShuさん
《原作》
軽快な会話文中心で、楽しみながら読めました。和美は色々不満を言ってはいますが、明るく
幸せそうな家庭を描けていて良かったです。
会話の中で「ババア」のくだりでは、おもわず吹き出してしまいました。
ただ、誰のセリフか分からなくなり、混乱することがありました。
日常ミステリなんでしょうが、カバンの中から緑の絵本が出てきたときに、オチが分かって
しまったのが少し残念でした。
ラストでは「葵」と青を掛けて、名前を「緑」でもよかったなとありますが、ここまで考えて
名前を「葵」としたんでしょうか? そうであれば「ババア」や「葵」など言葉の掛け合いに
センスを感じます。
《リライト》
原作で、すぐ謎が分かってしまうところを中心にリライトされていて、日常ミステリとして面白く
なっていました。
探し物が「リスが書いてある青い絵本」、目的の物が「森の絵本」で、色や動物など直接的な
関連を持たせなかったのは良かったと思いました。原作を読んでいるので、多分これだとは思い
ましたが、決定的ではないので興味を引き続けることができました。
姑を解決役にしたことで、物語の厚みも増したように感じました。
文章も読みやすくなって、良いリライトになったと思いました。
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「幸せの配達人」 原作:KAICHOさん リライト:yositaさん
《原作》
短編でこれだけ完成度が高く、感動的な作品はなかなか読むことが出来ないと思いました。
青い本とは何なのか、疑問に思いながら読み進めていると、いつの間にか物語に引き込まれていました。
「ボク」の配達人としての幸福感や満足感が、余すところなく伝わってきました。それが最後では
強い説得力をもって、配達人としての義務や疑問が感じられました。
そんな中で最後のナカニシタエさんとの会話が、「ボク」にとっての救いであったように思います。
短編なのに満足度の高い物語で面白かったです。
《リライト》
この作品をリライトするのは、難しかったと思います。
作品の雰囲気を壊さないよう、リライトしているように思いました。
ナカニシタエさんの「でもね、知らせてくれてありがとう」の部分は、とても良く感じました。
初めて会った時は、みんなは喜んでくれるのに、タエさんは涙を流しながら平手打ち。後半では、
みんなには「ウサバラシ」されているのに「ありがとう」。この対比の表現がとても印象的でした。
「ボク」の落ち込んだ気持ちを救い上げてくれる、良い文章だと思いました。
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いつもながら、好き勝手に書いてしまい、申し訳ありません。
読書感想とか得意な方ではありませんので、的外れなこととか、失礼なことが書い
てあるかもしれませんがお許しください。
皆さんお疲れ様でした。次回も参加される方は、頑張ってください。