初見では、「抑揚がない」と感じました。淡々と現状と問題点を述べ、特にイベントも
なくその問題を打破する術を(理由もわからず)見つけ、そして淡々と問題を解決して
終わる、という。
それを狙ったのだ、といわれればそれまでですが、あまりにのっぺりとし過ぎていて、
読んでいて退屈さを感じました。
少なくとも、問題を解決するには「きっかけ」が必要だと思いました。たった一文を
書けないのはなぜか。それを書けるようになるのはなぜか。そのきっかけは何か。
主にその三つを変更しています。
・最後の一文を書けない理由 → 「自らの最後の文章だから」と気負っていたため
・書けるようになった理由 →
全ての文は読者のためのであることに気付いたため
・きっかけ → かつて自分を酷評した作家が、実は自分のファンだったと知ったため
大きな変更だったため、原作を改定しましたが追いついていない部分があります。
しかし、短編であれば、この程度の明確な指標は必要になるのではないかと
思いました。
本当はもう一つ、「最後の言葉」を具体的に書きたかったのです。そうでないと
作品が抽象的過ぎて読者に理解してもらえないだろうから、という理由と、読者が
納得できる具体的な言葉で書けるかどうかが、短編作者の腕の見せ所だと思うから
です。…でも、思いつきませんでした…。
あとは作品を読んでいるうちに書いていったメモです。参考までに。
・出だしは、今困っていることをそのまま書くように変更する。原作では前置きが
長い気がするから。
・一人称が「自分」「オレ」の二つある。加えて、非常に文語的なセリフが多いので、
「オレ」はないのではないか。「私」に統一。「小生」でもいいかも。
・結局、何も起きていない。主人公が最後の言葉を紡ぐまでの葛藤を打破するための
イベントが何か欲しい。→ライバルの死と、その彼からの「最後の言葉」はどうか
・「――Never
write useless
words.――」は不要。師匠が舶来の人ならいいかも
しれないが、今回を見る限りそれは本質ではないだろうから。
・「あの先生はいつも何かをたくらんでいるようなニヤニヤ笑いをする」は、「ごく
稀に笑いを浮かべれば」なので「いつも」ではないはず。
・「寡筆」と「遅筆」は違う。この人は「遅筆」なのでは。
・チョコパフェを例にするのは、この文体ではちょっと軽いので、もう少し形式ばった
文語的なものを例示したい。
・「生涯に書ける数には限りがある」ことと、「だから無駄を書くことは生涯を
浪費することだ」はちょっと繋がらない。駄文を延々と書いて一作、厳選した
言葉で紡いだ作品も一作ならば、どちらも無駄ではないのでは。
・「彼は常に孤独だったのだ」は、孤独とは自ら求めるにも関わらず相手が
居ない状態だと思うので、「独り」に変更。独立しているというか自立していると
いうか。
・「創刊号に間に合わなかった」のは本編とは関係ないので、創刊号に間に合うように
書くよう変更。
・さいごの「ん」は、散々迷ったが作品に合わないと感じたので削除。「うむ」だった
ら残したかも。
……これはきっと進行豹さんのことなんですね。いつまでも、読者のための作品を
書き続ける作家になりたい、と。私もそう思います。