彼の吊り橋リライト方針:

イベントが多すぎて、最後のオチが「あれ?そうだったっけ?」のように
霞んでいるように感じました。恐らく、事象が時系列に分散している上、最初は
それぞれに関連性がわからないために、より散漫な印象を受けるのではないかと
思います。

そこで、流れを大幅に変更して、以下のように纏めることにしました。

 ・「彼」と「わし(橋)」の人生を同期させることに注力する
 ・イベントの数は少なくするが、いいイベント・悪いイベントは交互に配置
  して波乱万丈感を出す
 ・イベントの発生感覚を一定にする(リライトでは10年おきにしている)
 ・「彼」は、自分が独り言を言っていることを自覚しているか、結果的に
  そうなっていることをもう少し前面に出す

これに伴い、登場人物の削減、橋の名前がかわっていく設定の削除などを
実施しました。橋の名前が変わっていくアイディアは面白かったので入れたかった
のですが、この長さの短編ではちょっと難し過ぎました。

登場人物は名前を明示しないように変更しました。登場人物数が少なくなった
ために、その必要がなくなったからです。
これは今回とは無関係ですが、特に短編で登場人物の名前をつけるときは、
「あかね」、「美夏」、「アキヒト」、「隼」 のように、字数と画数、
平仮名カタカナを駆使する形で、名前に字面的な相違を持たせるべきだと
誰かに聞きました。そうすることで、誰が対象なのかが「読まずに見るだけで」
読者が理解できるからです。陽子、瑤子、暁子、葉子、のような、似たような
字面の登場人物名が列挙されると、読み手に混乱を与えるのだそうですよ。

原作にはいくつか謎が残っています。短編だからこそ、こういうちょっとした
ことが引っかかるのです。リライトではそのあたり気をつけて理由付けをしたり
書き直したりしています。
 ・遊園地閉園後、なぜ橋は取り壊されなかったのか?
 ・郁男を突き落とした陽子ははなぜその時でなく二年後に自殺したのか?
 ・郁男の兄はなぜ真実を知っているのか?

それと、「わし」は終盤まで厭世観のようなものを漂わせていましたが、
それが最後の最後、恩返しのための自壊に至るのが唐突に感じます。もう少し、
最初から、「彼」だけは特別だった、ということを出した方がよかったと
思いました。


それにしても、一人称「わし」はなかなかいいですね。これは今後どこかで
使わせてもらいたいです。