序盤から続く郁美の無理やりな言い訳がくすぐったいような笑いを誘い、全体として楽しく読めました。
構成をいじる必要はなく、リライトとしては展開として引っかかる部分を滑らかにすることを目指しました。
物語としてテンポを良くするためにはアリかとも思いますが、今回はリライト対象としました。
郁美は旬との出来事を「七年と……ええと、四ヶ月と十一日ぶりだ」などと病的に詳細に記憶し、旬に対しストーカー行為をとっている。
末尾「そう? ボクはずうっと前から知ってたよ?」とは、郁美が変態だということを知っていたという意味と解釈した。
ただ全く郁美を気にせず橋まで歩いていることから、作中で直接描かれたストーカー行為については旬は気づいていなかったと読める。
「郁美がこうやってストーカーとかする人だってことを知っていた」という意味にとることもできるが、伝わりにくいと感じた。
郁美の変態性については作中でストーカー行為と、ノート等による病的な記憶・記録との2点が描かれているが、
そのどちらについても旬が気づいていたとの描写がなく、今回郁美が旬と橋で出会ったことについてもストーカー行為であるとの断定もなく、
すると何を「知っていた」のかが曖昧になる。
この一文で唐突に「知っていた」と突きつけられる衝撃を意図したものと思う。
しかし。一太刀で決めようとタメをいれたが、間合いがズレてしまったといった印象。
この一文で驚かせるために、読者側に理解させる布石があるべきとの考えから、2人のやりとりを追加した。
また警察に通報されたことについて、どのような理由で通報されるに至ったが判然としない。
ロングスカートの人がパンチラを狙っていたという事情が理由になったように読めるが、
屋内であれば「聞き耳を立てて」聞こえるとしても、屋外で離れた立ち位置にいる周囲に聞こえていた言葉は
「お付き合い!!!?」
「変態とかいわないでよ!
ちょっと人と違う趣味ってだけじゃないっ!!!!」
「だって! あの人、あんなに目立つ格好でいっつもずうっと立ってるから。だから――仲間を、探してるんじゃないかと思って」
という大声に限られるように思われる。これだと女装やパンチラについて認識できるとは考えがたい。
「そっちの姉ちゃんは、その辺、わかってるみてえだけどな」というのも、郁美について知らないこの男が言うのは不自然。
それを棚上げにしても、郁美はもともと仲間を求めていながら我慢しているというわけでなく、内容も当たっていない。
同族が引かれあうという表現であるなら、抽象的に変態性を見抜くというようにぼかすべきと思いました。
自分も徹底できていないのではありますが、「ひと」と「人」との表記のブレに気付いたので指摘しておきます(ex314行目)。
また平仮名が多用されすぎている印象はあるのですが、それが柔らかい印象を与える意図と解釈して基本的には維持しましたが、一部漢字化しています。