今回は苦しみました。この作品で何をやりたかったかは判るのですが、どうすれば
もっとよくなるのかについて、ずっと思いつかなかったからです。結果、三編ほど
別方針でリライトしてみましたが、結局原作に沿ったものを採用しました。
「回ってる感」はこれが一番大きかったので…。

白状すると、初見では何がループしているのか全くわかりませんでした。何が
言いたいのかも判りませんでした。判ったのは、脈絡のなさそうな段落が列挙
されていたことだけ…。そんなはずはない、と何度か読み直して、それでやっと
なんとなくつながりが判りました。

原作では、中ほどの話のいくつかは、現実かどうかすら明確にはわかりません。
その混沌さが良い、と言うには複雑すぎると感じました。短編でここまでたくさんの
(しかも脈絡が小さく登場人物名が重複する)場面が連続すると、切り貼り感の方が
大きく、読者の混乱は否めません。

本作でやりたかったことは、「先頭と末尾で結びつきつつ別トピック述べた小段落が
続き、作品の最初と最後とでループする」ものだと理解しました。これと、もっと
判りやすくするために、以下の方針に従ってリライトすることにしました。

1. 最初と最後の一文は同じにする
 ここでループ感が極大化されることを狙います。
2. 作中の登場人物やその関係は、一つの現実に沿って明確に記述する
 たとえば美唄という人は、滝川の編集者、留萌のマネージャと二人出てきます。
 親戚らしいのですが、同じ名前の人が出るだけで読者は混乱するので、ここは
 別の名前にし、「知り合い」にしました。また、「名前」か「苗字」かがわかり
 づらかったので、苗字だと判るようにしました。
 また、留萌も最初女優ですが途中で声優になっていて、どっちもやっているので
 しょうけれども、それがわかりづらかったです。なので、リライトではいくつか
 補足しています。
3. 隊長が最後に地球を救うことを決断する根拠が弱いので強くする
 原作では、なんとなくまぁ大したことないし救っとくかー、くらいのノリですが、
 リライトでは隊長はサクラノミコンと留萌ちゃんのファンということにしています。
 そうすれば、自分のためだけに地球を救うという、ある意味オチが生きると
 思いました。
4. 全段落に『サクラノミコン』という作品名を入れる
 統一感の無さが最初に読んで感じたことです。統一感を出すために、各段落で
 サクラノミコンを登場させ、そういう作品が世界を支配していることを明示しようと
 してみました。

本作の原作の気になるところは、「そうである必要がないのにそうなっている」
部分が多いことです。特に短編ではそれが読者の気を散らせる原因になることが
あるため、厳に慎むべきと感じました。
同じ理由で、今回で言えば、ラーメン屋と小惑星接近のニュース部分は削った方が
よいかとも思うのですが、前後をつなげることがどうしてもできず、残しています。
力及ばず…。

本作を読む上で、「ネクロノミコン」と「ペンローズ」がどのようなものであるか
知っておく必要がある(知らないと面白さが半減してしまう)のが引っかかりました。
実は私も寡聞にして知らず、Wikipediaのお世話になりました。こういう「前提」が
ある作品は、読者層を狭めるので、やってもいいけれど、知らなくても楽しめる、
知っているとちょっとにやりとできる、程度の知識に留めるのがよいと思います。


他、リライト中のメモです。

・滝川が書いていたのはマンガだったんですね。最初小説かと思いました。
 「ペン」がよくなかったんだと思います。
・留萌と美唄だけ複数回登場するが、彼女らの役割があいまい
・*ヒロイン*は留萌が演る→「今*主人公*のセリフを練習して…」は矛盾