主人公はうだつのあがらない中年TV局カメラマン。 かつて映画業界にいて酷い目にあったらしく、言動の端々には映画への嫌悪が。 しかし、食うため、家族をささえるために、日々の仕事を淡々と熱意なくこなしている。 が、その家族も、主人公に批判的。妻は夫が全く出世しないことにいら立っているし、 映画好きの息子は、映画嫌いの主人公とその点で感情的に対立している。 主人公があまりに憔悴しきっているのを見て、友人が飲みに誘う。 主人公の口から語られる、さまざまな苦悩、慰める友人。 「逃げ出したい」という主人公のグチを、ただただ黙って聞いてやる。 その優しさに落ち着いてきた主人公、「そういえば、明日から大きな仕事って話じゃ」 「準備はしてあるから大丈夫さ」と友人。 -----以上で1ページ--------------- 主人公帰宅、シャワーを浴びてベッドに入ると携帯に起こされる。 『友人が交通事故にあった!』 あわてて見舞いにいくと、幸いにして命に別条無し。 が、仕事が出来る状態ではない、「すまないが変ってくれないか?」 主人公、友人の“大きな仕事”が、アカデミー賞授賞式のカメラであったことを知る。 主人公の苦しげな表情に、「無理ならいいんだ」と友人。 もやもやしたまま出社する主人公に、けれども上司命令での「その仕事の代替」が。 感情的な反撥、高圧的な上司、「従わねばクビだ」との脅しに、それなら! となりかけ る主人公だが、「友人の評価にも影響が出る」との次の矢に屈服。 しぶしぶセッティングをしていると、ドレスアップした女性に声をかけられる(元カノ)。 彼女は、あからさまに主人公に気がある様子。再開をよろこび、「後であえない?」と。 -----以上で2ページ--------------- 「映画のカメラの仕事がある」「あなたなら、すぐにブランクを取り戻せる」 「また一緒に仕事がしたい」「あなたに恩返しがしたい」等々。 二人の会話から“かつて、彼女は主人公の弟子だった”“色恋沙汰のもつれがあった” “彼女のために、主人公は身を引き、映画界から去った”らしいということがわかる。 そのモツレの原因も今はなくなった、との話しまでをされ、けれど主人公は同意できない。 家族の顔や、友人の顔や、上司の顔までが頭をよぎってしまう。 「今の生活を、本当に捨てたいのか?」という葛藤が自分の内にあることを主人公は知る。 と、スタッフの一人が彼女を呼び出す。 主人公、彼女が“撮影賞のノミネート対象”であることを知る。 「またあとで」と手を振る彼女に、主人公は無言でその手を振り返す。 -----以上で3ページ--------------- 主人公、一人になり振っていた手を握り締める。 舞台裏、TV局仲間たちのもとにもどり、真剣に熱心に撮影プランを確認し、素晴らしい アイディアを連発する。 撮影賞を見事に受賞した彼女を、主人公が鮮やかにカメラにおさめてカットで、おしまい。 -----以上で4ページ---------------