■GoShuさんに頂いた 第二章 infinite_routine v0.90 ご感想のご紹介


+ご感想は許可を得た上での転載をいたしております。
また、<ネタバレ部分>についても そのまま公開させていただいておりますのでご注意ください

+また、必要と思われます部分には(蛇足を承知で) <編注>を加えますことをご容赦ください。



GoShuです。


全ルート一周目を終えたので、最初の感想を申し上げます。


とはいえ、もうこれまでのような感想は書けないな、と思っています。
第一章と比べ、作品が質的に変わってしまったと思うからです。

物語世界が変質してしまったという意味ではありません。
物語の世界観はそのままに、作品の内容・質が一次元高くなったということです。

私はゲームの各要素のうち、ストーリー・文章に対して 最も関心が高いです。


ですから、まず物語の全体構造が明らかになるにつれ、
物語世界が平面から立体になる感覚を持ちながらプレイしていました。

そしてそれと完全に同時進行で人物関係の描写も同様に ふくらみを増していくのを感じました。
のみならず、演出もそれに遅れをとらずに物語を表現しきっているのも感じました。
あるいは一部の演出についてはそうであることに 「気が付きました」。

変質が作品の一要素・一部分だけならばこういう感覚は感じなかったでしょう。

すべてが相伴って質変化したために、「ああ、この作品は変わってしまった」という思いに駆られてしまったのです。

幼虫が成虫に変わるのを見るのに似ていました。

ちょっと具体的に申し上げると、ローズマリーが自らの正体を明かす部分。

上記の物語世界・人物関係・演出の立体化が最も如実に出ています。

演出は抑制気味ですが、ローズマリーの置かれた境遇・・・
長い時間とゆっくりとした侵蝕、そして終わることのない繰り返し・・・
を表現するには そのほうがよいのだと思います。

くろえの本心を覗いた後のスパルタにしても、
表面は徹頭徹尾魔術戦の実際のことだけであり、他には何もありません。

しかしあっさりした、とりつくしまもないやりとりの下に 二重写しになって別の心象風景が広がります。
・・・で、そんなことを考えていると、スパッと画面が切り替わって、りんね飛行のイベント絵が出てくるんですからね。
参ってしまいますね。

一番最初に感想の書き方のことに言及しましたが、
これまでは正直なところ、「アドバイス」的な要素もありました。
うざったいところがあったらお詫び申し上げます。

だから読み方についても それを前提にしながら読むようなところがありました。
悪い言い方をすれば「アラ探し」になるのかもしれません。

しかし、今回は途中で「それは違う」と思いました。
これは物語にそのまま身を委ねてよいし、
そうすべき、そうしなければならないと感じました。

逆にいえば、その「それは違う」の感覚の源泉はなにか、
ということを考えたときに、上に書いたような 質的変化に思い至ったのですが。

というわけです。
これからは感想どうしましょうかね。
手作りのログハウスに対してであれば
「この木材どうなの」
「こっちの壁、少し歪んでない?」
などと言いたいことが言えますが、
そびえたつビルなのであれば、
そういうことは言えないし、似たようなことを言うのであれば、全く視点を変えるべきだと思います。

雛鳥なのであれば世話もできますが、
空をすべる燕なのであれば、下から眺めてその姿を愛でているだけでいいとも思います。

感想やレビューでなく、評論でも書こうかな?
それとも「おもしろかったです」の一言だけにしようかな?

そんなことをいろいろ考えています。
プレイヤー側も「第二章」に入った、というところでしょうか。

さて、とはいえ、今回v0.9に限っては、前回体験版との
絡みなどがありますので、もう一度だけ これまでと同様レベルの感想を、粒度を思い切り荒くしてお送りしようと思います。

v1.0以降は、それからゆっくり考えます。

とりあえず、お疲れ様でした。
作品ありがとうございました。





(以下:追記のメールとして頂戴いたしました v0.90のご感想です)

GoShuです。

先に「感想をお送りする」と言っていながら遅くなってしまいました。

ここしばらく忙しかったということもあるのですが、実はそれだけでもありません。

「さて、もう一回スルーでプレイして感想をまとめるか」

と思ってはいても、

「うーん、でももう安心だし・・・」

と考えるとゲームを起動する前に横になり、そのまま眠りに落ちて行ったのです。

これは燃え尽き症候群です。
前代未聞なことに、制作者の前に、何も努力しておらず、
何も達成していないプレイヤーのほうが先に燃え尽きてしまいました。

とはいえ、単に燃え尽きていただけでもありません。

多少つらつら考えていたこともありますが、その大部分は V1.0発行後に書いたほうがよろしいかと考えています。

今回は先に申し上げたように、これまでと同様レベルの感想とさせていただきます。

まずは気になったところから始めます。
「長く感じた部分」です。体験版部分も含みます。

・黄泉比良坂の「008_6_【選択肢】死への距離感.bmp」
 部分以降
・学園でのマネージャー会議
・結界内、動物病院での結界脱出会議

共通するのは、「ストーリーの進行との関連が見えない文章が長く続く」点です。
先行体験版感想の際に「延々と保留状態に置かれる」
ことに対して苦情を申し上げましたが、それと同じ理由となるでしょう。
結界脱出会議は、「脱出する」というストーリー進行に沿った議論ではありますが、

「地下二階に行ったらどうなるのか」

「脱出したらくろえはどうなるのか」

という重要な部分が無視された会話であるため、私の印象としては同じカテゴリに入りました。

上記の文章で語られる内容、長さがストーリー進行上必要であることは理解します。

しかし、そのことと「長く感じる」ことは打消しあわずに両立しています。

比較対象として、ある程度量があり、動きも少ないながら 「長く感じない」部分を2つ挙げてみます。

・死霊術儀式前、家族会議〜アラディアとまなの見送り部分。

・ローズマリーが自らの境遇を語る部分。

長く感じない理由は後者のほうがおそらく簡単で、ローズマリーの告白する内容に圧倒されること、
および 告白により物語の全貌の一部が明らかになる快感があったから、となります。

前者はそれと比較するとやや難しく、
「同席するキャラクターが多いため、それへの興味が長さへの印象を緩和させる」
ということになるでしょうか。

同席するキャラクターが多いことは、本作品のひとつの特徴である「キャラクターの温かみ」も感じさせる効果があります。

会話内容が緊迫していても、本質的な居心地のよさが それによって消えはしません。
このあたりは、私の持つ感覚から来るものも大きいでしょう。個人差があるところだと思います。

長く感じるところは以上なのですが、逆に言えばトゥルーでは
「結界内でのりんねとの電話」からラストまではダレることがなかったことを意味します。
それは非常な作品レベルの向上と言って差支えがないと思います。


長く感じる他に、細かいところで気になる部分はありますが、

・これはV0.9である。

・多少気になっても先を読み進めるのに支障はない。

ということから(特に後者は重要です)、やや大きいところだけを挙げます。

まず、魅了術師の具体的な能力(眠らせるだけではないでしょう)、
および精神魔術戦の目的・勝敗の付け方が明瞭でなく感じられました。

それは学園世界内における各人物の行動指針に関わることですので、少々気になります。

次に、ラストバトル周辺で、

・バトル開始直後、りんねたちが「蠢く草」に絡めとられようとする 〜 イプセが受けとめる、
までの状況が  すぐには把握できません。
 細かく言いますと、

 @丘の上に立つりんね、フロロン、カナヘを触手が襲う
 
Aホウキが絡めとられる
 
Bフロロンがホウキと触手を切る
 
Cりんねがフロロンとカナヘを丘の下に突き飛ばして 自分も飛び降りる

 D貴一が触手(毛)を王水にする

 Eケミナイが風を起こしてりんね、フロロン、カナヘを吹き飛ばす
 
F着地点でイプセが3人を受け止める

 という順番ですが、
  
●数少ない描写でホウキが幾度も強調されている&貴一が”飛んで”と叫ぶことから、
Cまで、あるいはC以降でも「りんねがホウキに乗って飛んでいる」のかと誤認する。

●ケミナイに風を起こす能力があることは知らないので、Eの部分で何が起きたかわからない。
 
という混乱が発生します。
 
スピード重視の演出であることはわかりますし、それは成功していると思います(重要)。
 
描写が少ないのではなく、もう少し整理があると よりよかったと思います。

・陶耶の山一つの交換が非常にわかりにくく感じました。
 交換が行われたのは謎かけの種明かし直後でしょうが、
 「揺れが起こる」だけであり、何が起きたかの視覚的描写がありません。
 
これは少々不可解で、この時点で何が起きたか わからないと、
その現象の原因が陶耶であることが本人の口から明らかにされた時、
 グラッフィに止めを刺す非情さが伝わらないと思います。


気になる点は以上として(後にもうひとつ書きますが)、
mixiにも書かせていただいた演出面に話を移します。
文字スクロールを始めいろいろ技術的な引出しが増えておられるなと思います。

パッと見えるものだけではなく、
「012_4_管というもの.bmp」を例に挙げると、

画面がカナへと貴一から、フロロンの発言によって
一旦フロロンに移り、そしてまたカナへと貴一に戻る。
戻るときはテキスト4行表示の途中、3行目で戻る。

といった細かい表現が見られます。
このレベルの演出を細かく個別に列挙するのは あまり意味がありません。

ただ、この例で言えば貴一の視線の動きや心理の動きが感覚としてプレイヤーに伝わりやすくなっており、
このような細かい点の向上の集積が品質を底上げしているのだと思います。


Nonトゥルールートについて。

体験版感想でも書きましたが、第二章の大きな特徴は、
Nonトゥルールートが物語内で持つ重要度の高さだと思われます。

くろえの背景、ローズマリーの背景が詳細に描写されている
「Happy End?」ルートと「end_of_routine」ルートが あるとないとではトゥルールートが与える印象がまるで変わってきます。

今回、甲子園ルートを先にプレイしたのは、そういう認識に基づいたものです。

この手法では肝心の主人公がいくつかの情報をトゥルールートでは知らない、ということにも なってしまいますが、
プレイヤーだけが知っていればいいことであれば問題ないわけで、
ビジュアルノベルならではの手法であり面白さだと思います。

(「Happy End?」ルートで貴一くんがなんとびっくり Sになってくろえ姉を責め立てていますが、
 これと目覚め直後にボコボコにされるシーンは対になっているわけで。こういうところも面白いですね)


魔術について。

術封術およびその魔術根拠には感心しました。
魔術講座でその名が出た時から、どんな魔術なんだと気になっていたもので。
術封術師と他の魔術師との主観は絶望的に相容れませんね。


さて、最も気になった点を申し上げます。

「第三章で終わるのか」という点です。

くろえとローズマリー、それにフジマルの描写が これほどの詳細度を持っていますと、
他の主要人物も同様にしないと物語としてバランスが保てません。

しかも かや、りんね、先生、陶耶と大物が残っています
(まさか陶耶をただのバカや狂人で終わらせるとは思えません)。

IPさんもウォーロックさんも第二章には登場しません。

グレンウィルの描写もそれなりに追加しなければならないでしょう

(彼の下の名前はサウスゲートというのでしょうからなおさらです)。

人物描写以外でも、物語世界が解決・結末を迎えるために要求するボリュームというものもあると思います。

全四章の第二章だったら安心かつ納得できたのですが、現状では第三章の内容が駆け足にならないか、

それが最も心配するところです。

ただこれは、上に書いたNonトゥルールートの件とも関連します。
その手法で解決しうる問題かもしれません。
そういう面でも、V1.0は相当に気になっています。


誤字指摘です。前も言いましたが、私はテニヲハの誤字は気にしません。
ただ2点だけ指摘します。

・1012_1_激動.bmp  →鼓膜ではなく網膜でしょう。

・「004_1_way_to_home.bmp」「004_5_母子の情景.bmp」  →これはHexaQuarker Walker管理人の職責として。
  
孔雀舘からの帰途で、目的地が新前橋となる電車移動は存在しません。
前後の文脈から、 おそらく「高崎」の誤りかと思います。

(編注:ご指摘いただきました箇所につきましてはv1.00で修正させていただきました)



最後に、いろいろいい文章がある中で、個人的に最もヤラレタ、感動した文章をスクリーンショットで添付させていただきます。






「えっここ?」と思われるかもしれませんが、
この前のすべてのローズマリーの描写があって初めて成立するもので、すごいGがかかっています。

そしてさりげなく「スミレ」。いいですね。

やっぱりこの章はローズマリーの章です。
V1.0追加で何があってもなかなかそれは揺るがないところだと思います。

彼女のこの表情は
冷静にも見えるし、怒っているようにも見えるし、こちらを窺っているようにも見えるし、泣きそうなのを我慢しているようにも見える。
そんないい絵だと思います。

彼女についてはあまり立ち絵表情変化は必要ないのかな、と個人的には思います。


というわけで長くなりましたが(粒度を上げると言いましたがあまり上がっていない)、
こんなところとさせていただきます。

V1.0後では、感想か評論かわかりませんが、
オープンにできる文章にしたいと考えています。

それでは。




<いただいたご感想は以上です。ご感想、ありがとうございました!>