■GoShuさんに頂いた 第一章 gate_way ご感想のご紹介


+ご感想は許可を得た上での転載をいたしております。
また、<ネタバレ部分>についても そのまま公開させていただいておりますのでご注意ください

+また、必要と思われます部分には(蛇足を承知で) <編注>を加えますことをご容赦ください。



こんばんは。
以前製作日誌にコメントさせていただいたGoShuと申します。

第一章 gate_wayの感想など書かせていただきます。
失礼なことを申し上げることがあるかもしれませんが、なにとぞご容赦ください。

なお、以下、断りのない限りトゥルールートのことです。
日誌コメントにも書きましたが、キャラクター造形がなんといってもすばらしいです。
まさにExcellentです。

白眉のかや(陰の、あるいは真の主役に思えます)は言わずもがなですが、
第一章ではあまり登場しないキャラでさえ、設定が立体的、重層的ですね。

くろえを例にとると、体験版段階では「切れるが粗暴なキャラ」という印象ですが、
本編での数少ない描写で「11年前」および「地下2階に住んでいる理由」があり、
口には出さない、家族を思う気持ちが描写されています。
振り返って「あー、いちおアネキに伝えといてくれ」という体験版部分の台詞なども生きてきます。
「あー」がいいですね。うまいです。

もう少し突っ込んで考えてみますと、単にキャラクターがすばらしいのではなく、
以下の2点がExcellentたらしめていると思います。


●キャラ同士の関係

 一人一人のキャラが魅力的なだけではなく、 「キャラ同士の関係、やりとり」がさらに魅力的です。
 第一章における人物間のやりとりは多くが 「貴一+他の誰か」であり、
(本作が「きょうだい愛」 「師弟愛」の物語と定義されているとおり)
貴一は ほぼすべての登場人物に愛されていますので、 やりとりの底には愛情が流れています。
 貴一が作中で数え切れないほど頭をかいぐられるのは 象徴的表現ですね。

 キャラの個性が強いために発生するビックリ箱のようなやり取りと、底に流れる愛情表現が調和して、心地よさを感じさせます。

 貴一に対するときのアラディアを例にとると、
 時に「当たりはやさしいながらも厳しい師匠」、
 時に「年の離れた恋人」、
 そして多くの場合は「母性そのもの」。
 ドタバタを演じながら、その顔を変えつつ接するのが いい感じです。

 かや・まなとのやりとりについても同様です。

 # 日誌コメント欄に「暖かく優しい物語」と
  書かせていただいたのは、この印象が最も強い読後感として
  残ったという理由によります。
  
 紺来家とその周辺は良い人ばかりという気もしますが、 作品世界がおどろおどろしい部分がある上、
 家の外からは害意を受けている/地下にはそのものずばりの災厄がいる、という状況なので、印象としてはバランスが 取れていると思います。


●キャラ描写の道具立て

 私が本作品で最も感銘を受けたのはここです。
 「このキャラはこういう人です」と表現するための 道具立てが非常に非常にすばらしいです。
 ベストが「黒い目玉焼き」「ネコのルール」です。
 「45kg強」もいいです。どんな人物なのか、一発でわかります。
 「説明するな、描写せよ」という表現の鉄則がありますが、 これらは模範実践例としてもよいものだと思います。

 作品冒頭にこの描写があり、一気に引き込まれます。
 傑作の予感を感じ、「この作品は追いかけろ」と 内なる声がしました。

 この描写能力は、本作のようなファンタジーだけではなく、 どんな作品全般に共通して必要なものなので、
 この作者はどのような作品でも書ける人だな、とも感じました。

キャラクター周りは以上です。



次に「縦軸」たる「独自の魔術体系」です。が・・・
長くなりすぎるので、メールを改めます。



<編注:以下、新しいメールで頂戴いたしましたご感想となります>


GoShuです。続きです。


「縦軸」たる「独自の魔術体系」です。
こういう独自世界の構築を見るのは大好きです。
また、この魔術体系は非常に考え込まれており、ボリュームは圧巻です。
こういうものを贅沢な読み物というのだと思います。

ただ、正直申し上げまして、難解であり、完全にわかったとは言えないのが実情です。
この文を書くためにトゥルールートをもう一度全部やり直したのですが

(アラディア登場、錬電クッキング〜前橋への出発など、
重要説明部分は3度以上やりました。
また、体験版相当部分はVer.1,Ver.2,本編を通算して7回はやっていると思います) 、

まだ釈然としない部分が残っています。


ひょっとしたらあまり詳細部分にまでこだわる必要はないのかもしれません。
ただ、私の印象としては、ここまで詳細に魔術説明がある以上、この説明を理解していなければ
先々の面白さが失われるような展開になるのでは・・、という認識があったのは事実です。

「ルールストーリー」という、私が勝手に作った用語があります。
例を挙げれば、「Death Note」や「カイジ(エスポワール編)」
などのように、作品内にゲームのような独自のルールが設定され、
そのルールの応用や例外発見などによりストーリーが展開するというものです。

本作をこれらと同列とみなしているわけではないですが、
少なくともこの魔術体系のルールがストーリーと密接なつながりはあるだろう、とは思っていました。
で、できる限り理解しようとして (まるで貴一のように立ち止まりながら) 読み進めていったのですが、そこここで引っかかってしまいました。

引っかかった部分をいくつか具体的に述べます。

※なお、HP上の魔術講座は目を通させていただいておりますが、 本編から読み取れる部分のみについて記述しております。


まず、魔術体系の説明内容としては、

1.一般的な魔術の説明
 ・魔力
 ・魔法
 ・魔術
 ・門

2.各魔術系統の説明(登場順)
 ・予見術
 ・請紋術
 ・錬電術
 ・死霊術
 ・錬金術

3.魔術関連知識の説明
 ・術具
 ・呪文
 ・魂
 ・生命
 ・死体
 ・含魔希物
 ・含魂希物

4.特殊な事象・存在の説明

 ・無意識の魔力と魔法
 ・地下の存在("銘秘の後家")
 ・"紺来"
 ・"偽装"と"魔術師の目"
 ・「全ての謎を解く者」としての貴一の能力
 
といったあたりだと思います。

とりあえず、タイトル魔術である錬電術はある程度理解したいと思ったのですが、これがなかなか難しい。

思考過程を述べます。

・作中で最初に説明があるのは上記1です。
 この時点で、魔法の発動(現実世界へのなんらかの影響を 発生させる意味)の流れは以下だと思っていました。

 (a)
 [魔力]→[門(意図した魔法へ変化)]→[現実世界]
 この流れの根拠は、含魔希物についての以下の説明です。

 (b)
 [魔力]→[含魔希物(決められた魔法に変化)]→[現実世界]
 この(b)は自動的な魔法変化であり、魔力提供者の意思は 介在しない、よってこの魔法は魔術とは呼ばない、という 趣旨の説明がありました。
 差異は門か含魔希物かだけですので、上記のように とらえました。

・アラディア登場直前、錬電術とは何かについての 貴一とアラディアの問答から。
 ここで貴一は、請紋術との類似を挙げます。
 そこで説明される請紋術の流れがなかなか頭に 入ってきません。
それは、上に挙げた流れとは 違っているからです。以下で間違いないでしょうか。


<*編注 以下、請紋術(ルーンマジック)についていただいたご解釈は作中で説明された“附与術(エンチャントメント)”との混同がなされておりますので、
お読みくださるかたの誤解を防ぐため、誤解部分には下線をさせていただきました
上記事実に関しましてはメールでのやりとりでご理解をいただき。また作中での“説明方法の不備・不親切”を私も理解し、改善の努力をお約束いたしました>



 (c) 請紋術
 [魔力]→[ルーン=門(意図した魔法へ変化 ※)]→ [魔法を帯びたルーン]→(なんらかの魔法発動条件発生) →[現実世界]

 ※ただし、ルーン=門とするためには、魔力を魔法に変化させる際に術者とルーンが接触していなければならない。
 「なんらかの魔法発動条件発生」時に魔法発動、ということは この部分ではそれほどはっきり説明されていないので、
 りんねの発言からの類推も加味しています。
 
 先に述べましたとおり、この部分を読んでいるときは 上記(a)(b)と単純に思っていたので、頭の中でかなりの 軌道修正を強いられました。違いは以下のとおりになります。
 
・肉体内に無くとも「門」としうるものがあること。 少なくとも「ルーン」では可能。

 ・ただし、ゼロ距離接触という規則がある。

 ・ルーンは、「門」でもあり、魔法を貯蔵?しておく媒体  でもある。

 ・魔法は、必ずしも即時発動となる場合だけではなく、
  ルーンに貯蔵?しておき、「発動待ち」状態にしておくこともできる。 (ルーン以外でできるかどうかは不明)
 
 
 最初の項目は(a)(b)の例外ルールです。 2〜4番目は請紋術追加ルールということになるでしょうか。



 以上をもとにして、錬電術の理解にかかります。
 
 ここで「呪文」「術具」が出てきます。
 「呪文」は意思を確定する役割という理解でいいのでしょうか?
 
であれば、意思が無言で確定できれば呪文は必須ではないのでしょうか?


「小テスト、回答」の項では、「呪文=キータイプ」と ありますが、
明瞭なイメージが形成できれば キータイプは不要なのでしょうか?

 実際にラップトップ自体の構成を見るときには キータイプはしていません。
 「門」としてのラップトップには不要だが、 「術具」としてのラップトップには必要なのでしょうか?

 これらはあいまいのまま、門=術具のラップトップ(以下LP) を使用した場合の流れの説明を読みます。
 以下のように説明されています。これでいいでしょうか?

 (d) 錬電術(LP使用時)
 [魔力]→(LPによるデータ化)→
 [LP=門(意図した魔法(データ化状態)へ変化)]→
 [データ状態の魔法]→(LPによるデータの現実化)→
 [現実世界]


 不安なのは、"LP=門"の部分です。
 「門」でなければ魔力は魔法に変換できないはず。
 だからこうだろう、と思うのですが・・・

 しかしこの流れの説明の直前に(「魔術師への遠さ」の項)、
 「データ化された魔力であれば、ケータイ、PHS・・・ テレビなども門として代用可能」 とあります。

 テレビが魔力を魔法に変換する?
 では術者は魔力を魔法に変換するために何か しなくてもよいのでしょうか?
 
そもそもラップトップなしの場合、術者がやらなければならないのは
術式理解と再構成後イメージの確定だけなのでしょうか? 魔力のデータ化は必要ない?

また、魔力のデータ化にはロスが発生するのであれば、
最初にアラディアがやったようなネット越し魔法発動は ロスが発生するということでしょうか?
 
ロスを発生させないために、「体内の門」、あるいは その代替となるものがあったほうがよい、という理解でいいのでしょうか?



くどくなって申し訳ありません。そろそろやめます。
「そこここで引っかか」ることの実例ということでした。


引っかかる理由としては、

 ・概念が難解である。

 ・部分部分で情報が不十分である。

 ・先に出てきた説明や現象と(少なくとも一見)矛盾する説明がある。

ことであろうと思います。



もちろん、本作は魔術の教科書ではありませんので、全ての説明をする必要はありません。
また、伏線としてわざと説明不足にする必要があることも承知しています。

ただそれでも、たとえば魔術全体を貫く大法則を先に提示し、
例外規定、追加規定を都度説明する、といった世界観説明のほうが安心できることは事実です。

新しい概念が出てきた場合、それまでの思い違いを毎回訂正しながら読み進めるのはちょっとつらかったですね。

簡単に言い換えますと・・・私のような血の巡りの悪いプレイヤーにもちょっとケアしてくれるとうれしいな、ということになるのですが。


他、主だった気になる点を挙げておきます。

<編注:以下“含魔希物”“含魂希物”に関する矛盾に関しては、私が致命的な誤字を犯してしまっていたことが原因となっております。
*当該の誤字については
パッチ1.02で修正させていただきました>
 

・魂のある生命は綾取れない、と言うが、アラディアは 登場時に自分を綾取っている。

 →後に、アラディアは「魂のある生命」でないことが  判明。

 →しかし、「物質+魂」は「含魔希物」という定義がなされているが、アラディアは含魔希物には見えない。
   
「次元制限」があるから、物質(ゴミ)は物質にしか綾取れないはず。

・含魔希物は「もの」だから成長できない、と説明されているが(「修正合戦」)、含魔希物は「物質+魂」 ならば成長できるのではないか。

・陶耶の元には「含魔希物」を奪取しに向かっているが、 含魔希物の再構成でもラップトップ同様の機能が実現できるということなのか。

・貴一の目では、フジマルの真の姿(おそらくはかやの 真の姿も)が見えない。

 おそらくは魔法により隠蔽されているであろう孔雀館や自然現象の蜃気楼さえ見通せるのに、不自然ではないか。

・まなはアラディアの存在、アラディアの死、貴一のマッシュポテト再構成、
さらには陶耶が今後の貴一あるいは紺来家におよぼす影響まで見ているが、これは予兆なのか予見なのか。
 醤油がなくても予兆/予見できるのか。
 また、頻度として多すぎはしないか。



こんなところでしょうか。

私の説明の見落とし、思い違い、あるいは第二章以降において説明がなされる予定、などであればお詫びいたします。
いろいろ文句ばかりつけて申し訳ありません。

これだけ書いておいてなんですが、「矛盾のない、面白くない物語」よりも、「矛盾のある、面白い物語」のほうがよいこと、それは理解しております。

今後も魔術体系の発展を期待しています。


さて、錬電術説明部分における最高のシーンは 「マッシュポテトと赤ん坊のまなを重ね合わせる」ところです。
すばらしいです。感動しました。

貴一が錬電術師になれたのは「信じたから」ということですが、この感性があるからこそなれた、という気もします。

本作品全体で最も残念だったこと。
マッシュポテトの画像がなかったことです。
貴一が初めて発動した魔術なのに。
これはかやの口調を借りて申し上げましょう。
「・・・・・・。無念。」と。


感想はおおむね以上ですが、いくつか補足を。

トゥルールート以外のルートについては、分岐型ノベルについての見識がありませんので、あまり申し上げられることがありません。

Nonトゥルールートで、たとえば「1年前から好きでした」という発言があれば、トゥルールートでも1年前から好きだったことになるんでしょうかね?
解釈次第という気がします。トゥルールートとNonトゥルールートはまったく関係ない物語という考えに立てば、さらに申し上げることがありません。

・Hシーン後のラブラブモードは(3人とも)いい感じです。

・HappyEndは気に入ってます。

くらいでしょうか。


あと、体験版Ver1とVer2でしたね。
音楽が入っているのはやはりいいです。桜崎さんは明るい曲のほうが好きな曲が多いです。
ですので、曲が入って最も効果的に感じたのは 「りんねすいさんっ!」導入部です。
雰囲気がガラッと切り替わるのは、りんねの性格も表現していて、非常に良かったです。

また、気がついたのは、立ち絵の切り替わりに気がつくことが多かったことです。
テキストのストップポイントのせいでしょうか。
特にかやの表情変化は非常に小さく、であるがゆえに重要なので、それがプレイヤーに気づきやすくなっているのは大きな進歩と感じました。

さて、長々しく、批判めいたことも書いて大変失礼しました。
このあたりで終わります。

たいへんな急速度で第二章構築準備が進んでおられますが、このエネルギーには感服しています。
お体には気をつけてご製作ください。

第一章プロモーションムービーは、音楽と映像の関連がすごくよいですね。
メインテーマ"Hexa Quark."は映像のBGMとしても引き立つ曲だと再認識しました。

表現面でもパワーアップする第二章、期待しております。




<いただいたご感想は以上です。ご感想、ありがとうございました!>


*文中で いただきましたご質問につきましてはメールにて “進行豹という一読者の解釈” を、ご返答をさせていただいております。
 が、「それが正解」 というわけではもちろんございませんので、“明確な誤解やミスが原因であり、その訂正を必要とするもの”以外については、
 こちらでのご紹介を避けさせていただきたく存じます。

*しかし! NONトゥルールートに関してはメールでお返事をし忘れた気がするので、この場を借りてご返答させていただきます。

『錬電術師 -HexaQuarker-』の物語内において “NONトゥルールート内で発生したイベントと無関係に
<キャラクターが知って、思って、認知している事実>に関しては、全ルートでそれは共有されている”


――と、ご解釈いただいて問題はないかと思います。